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2013年 9月 11日 [ イベント ]
No.623-2:芸術が恋しくなる季節、富山の美術館に足を運ぼう
●自然と真摯に向き合う、優しいまなざし
郷倉和子は、文化功労者で日本藝術院会員の日本画家。本展会期中の11月16日に99歳と、白寿を迎える年齢ながら、いまなお精力的に制作を続けている。過去には県立近代美術館で父、郷倉千靱との親子展、県水墨美術館で個展を開催している。本展は、優れた画業をあらためて紹介する記念展となる。
郷倉和子は大正3年、富山県小杉町(現、射水市)出身の日本画家、千靱の長女として生まれた。昭和10年、女子美術専門学校(現、女子美術大学)を首席で卒業し、翌年の院展に「八仙花」を出品し初入選。これをきっかけに安田靫彦に師事し、制作に励んだ。その後、新しい花鳥画を目指し、大胆な構図と鮮やかな色彩による造形的な作品を生み出していった。院展で大観賞を受賞した「真昼」は中央に色鮮やかな花、その背後には枯れたケシの花を描いた作品。生と死を象徴的に表現している。
昭和50年、父、千靱が他界したことも重なり、10数年もの間、自分にしか描けない絵とは何か、東洋画とは何かと、制作に迷うことになる。その苦しみのなかで出会ったのが、千靱が自宅の庭に植えた梅。寒中に凛と咲く梅の花の生命力に心打たれた郷倉和子は、梅を描き始める。「梅」の連作は30年近く続く代表作となる。梅と日本家屋は千靱との共通の風景であり、生活に根付いた主題となったのだ。
「白寿記念 郷倉和子展 心の調べ」では、学生時代の初期から近年までの代表作品、スケッチ、小下図、合わせて約80点を展示。気品ある画境で自然讃歌に満ちあふれた郷倉和子の世界を紹介する。
10月12日(土)には「梅花の詩をうたう―郷倉芸術の形成―」<講師:金原宏行氏(豊橋市美術博物館館長)>、11月10日(日)には「絵を楽しむ人生―名誉市民・郷倉和子さんのこと―」<講師:土井由三氏(元小杉町長、富山国際大学非常勤講師)>の講演会が開かれるので、ぜひ聴講を。
県立近代美術館では、「幼少期の郷倉和子先生は、男勝りのおてんばで、野原を駆け回っていたそうです。そんな体験が、先生の豊かな感性を育んだのかもしれません。この頃、千靱に連れられて富山県小杉町も訪れています。優しいまなざしで自然と真摯に向き合い、生命の尊さや生きる強さを感じながら、誠実に描き続ける画家の姿を感じ取っていただければと思います」と話している。
●まちなかの美術館で名画に出会う
富山市中央通りのまちなか美術館「ギャルリ・ミレー」へ。同美術館は、中心市街地の賑わい創出と芸術文化の振興を図るため、昨年9月に開館した。北陸銀行が作品と展示空間を提供し、富山県、富山市などによる運営委員会が運営を担当。開館以来、入館者は約1万7,000人を数え、着実に美術ファンを増やしている。
収蔵作品は、ミレーをはじめ、コロー、ドービニー、デュプレなどバルビゾン派の作品や写実主義の先駆者クールベの作品など53点。今年春に展示替えを実施し、現在、常設展では、「花鳥風月のこころ」、「羊と人間」、「神話の世界」、「恋人のいる風景」、「田園の中の道」の5つのコーナーで合わせて23点を展示している。
ミレーの作品では、14点の収蔵作品の中から8点を展示。「釣り人と青い服の少女」は牧歌的な衣装ではなく、近代的な衣装を着た男女が描かれており、ミレーが写実主義へ移行する重要なステップを示す作品とされている。ミレーの古典文学に関する造詣の深さを示す作品が「オイディプスとアンティゴネ」。老人と裸婦という異様な組み合わせで、代表作の「落ち穂拾い」とは異なった作風が印象的だ。「夕暮れの村の道」には、一日の仕事をやり遂げた安堵感が漂う。夕暮れは労働からの解放を告げる幸福の啓示のようだ。「羊の毛を刈る女」は、女性が羊をいたわるように手で押さえ、毛を刈っている様子を描いた作品。弱いものに対するミレーの限りない愛が感じられる。照明を抑えた空間で、深緑の壁に並ぶ名画を眺めていると、心もスーッと癒されていくようだ。
ギャルリ・ミレーでは、「常設展はコーナーごとのテーマに合わせて展示をしています。それぞれのコーナーでテーマのストーリーを感じながら観ていただくと、作品の魅力も広がると思います。ぜひ県内外から鑑賞にいらしてください」と話している。
- 問い合わせ
- 「白寿記念 郷倉和子展―心の調べ」について
●富山県立近代美術館
TEL.076-421-7111
FAX.076-422-5996
http://www.pref.toyama.jp/branches/3042/3042.htm
「ギャルリ・ミレー」について
●ギャルリ・ミレー
TEL&FAX.076-423-7220
http://www.gmillet.jp/