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2013年 5月 22日 [ トピックス ]
No.607-1:60首で知る大伴家持がみた、越の国。―『越中万葉をたどる』発刊
●独創的な歌の境地を作り上げた越中時代
“越中万葉”とは、万葉集の編纂に大きく関わった大伴家持が国守として5年間を過ごした越中で詠んだ歌(223首)を中心に、越中の官人や来訪者、親族などの歌を加えたものを指す。その数は337首にのぼり、万葉集全20巻約4,500首の約7.5%を占める。家持の万葉集収録歌は473首あり、そのうちの約半分が越中で詠まれたことになる。
天平18 年(746)、越中に赴任した家持は29歳。まさに働き盛りの貴族だった。夏でも純白の雪をいただく立山連峰、目の前に広がる越の海…。家持は雄大な自然とそこで営まれる人々の暮らしに大いに刺激を受けたであろう。そのみずみずしい感性が越中の風土によって研ぎ澄まされ、独創的な歌の境地を作り上げたともいわれる。
『越中万葉をたどる』は平成10年から24年まで刊行した「高岡市万葉歴史館論集」15巻の別冊として刊行。研究論文をまとめた論集とは趣向を変え、一般にもわかりやすい内容にした。「秋の田の 穂向見がてり わが背子が ふさ手折り来る をみなへしかも」(大伴家持)、「立山に 降り置ける雪を 常夏に 見れども飽かず 神からならし」(大伴家持)、「藤波を 仮廬に造り 浦廻する 人とは知らに 海人とか見らむ」(久米継麻呂)など、見開き2頁で一首を取り上げ、館長や研究員の解説文(情景や作者の心のうちなど)、原文、口語訳で構成した。60首は、代表的な歌や知ってほしい歌、家持赴任中の節目、節目に詠まれた歌など。家持以外の作者の歌や詠まれた土地なども熟慮して選んだ。歌を通して、家持の5年間の足跡をたどることができる。頁をめくるごとに、家持らの息遣いが聞こえてきそうだ。
●収蔵作品と連動――越中万葉の秀歌とともに珠玉の名画なども
高岡市万葉歴史館は、万葉集を素材にした日本画や洋画、版画などを数多く収蔵している。本書では、越中万葉の秀歌とともにそれら珠玉の作品や、研究員などが撮影した風景、花の写真などを掲載し、歌の世界をより想像しやすくしたことも編集のポイントだ。たとえば、「藤波の 影なす海の 底清み 沈く石をも 玉とそ我が見る」(大伴家持)には、日本画家・大島秀信氏の作品「藤波」と、田子浦藤波神社境内(氷見市)に建つ歌碑の写真を添えている。巻末には、越中万葉略年譜、越中巡行推定図、高岡市万葉歴史館の紹介などもある。
本書で掲載した日本画、洋画、版画などを展示したのが、刊行記念回廊展示「越中万葉をたどる」展<7月15日(月・祝)まで>。大島秀信氏の「藤波」、日下常由氏の「春の苑」、吉川正紀氏の「布勢湖晩秋」、谷口光雲氏の「馬なめて」など約20点を紹介している。歌、情景に想いを馳せながら、名画を心ゆくまで鑑賞したい。
『越中万葉をたどる』はA5判、138頁で1,000円(税別)。高岡市万葉歴史館や全国の書店で販売している。
高岡市万葉歴史館では、「表紙をソフトカバーにして、雨晴海岸と海上に浮かぶ立山連峰、月の写真をレイアウトし、一般の方が手に取りやすいようにしました。歴史館は平成27年に開館25周年を迎えます。北陸新幹線の開業の年であり、訪れる観光客らに気軽に越中万葉の世界に触れてもらえるよう、越中万葉をテーマにした旅の情報誌的なものも今後企画していきたいと思っています。ご期待ください」と話している。
『越中万葉をたどる』を抽選で1名様にプレゼントします。プレゼント応募フォームに、プレゼント内容「越中万葉をたどる」・氏名・郵便番号・住所・メールアドレス・電話番号・記事を読んでのご感想をご記入のうえ、お送りください。<5月26日(日)締切り。発表は発送をもって代えさせていただきます。>
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