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2011年 11月 9日 [ トピックス ]

No.531-1:富山発祥の配置薬システム、モンゴルの国家プロジェクトに


 300年余の伝統を誇る富山の「配置薬(置き薬)システム」が来年1月からモンゴル政府保健省の事業として導入される。モンゴルでは、日本財団(東京)の助成により設立されたNGO「ワンセンブルウ・モンゴリア」が、2004年から配置薬システムを活用した「モンゴル伝統医療普及プロジェクト」を実施。現在、8県35郡約2万世帯(約10万人)に置き薬キットが配置されている。

▲置き薬キットを利用するモンゴルの遊牧民世帯

●住民の健康維持・向上に役立つ

 300年余の伝統を誇る富山の「配置薬(置き薬)システム」が来年1月からモンゴル政府保健省の事業として導入される。モンゴルでは、日本財団(東京)の助成により設立されたNGO「ワンセンブルウ・モンゴリア」が、2004年から配置薬システムを活用した「モンゴル伝統医療普及プロジェクト」を実施。現在、8県35郡約2万世帯(約10万人)に置き薬キットが配置されている。

 富山の配置薬システムは、「先用後利」に特徴がある。薬の入った薬箱を家庭に置いてもらい、次に訪問したときに使った分だけの薬の代金を回収し、薬を補充していく独特のシステムだ。04年、保健医療体制の充実を目指すモンゴル政府から相談を受けた日本財団がこのシステムに着目し、県内製薬企業や県モンゴル友好親善協会などの助言を受けてモンゴルで開始した。置き薬キットの中には、胃腸薬や解熱剤など12種類のモンゴル伝統医薬品と体温計、包帯、脱脂綿、バンドエイドなどが入っている。価格は1箱約10米ドル。地方病院の医師や保健師によって住民世帯に配置され、後で代金の回収・医薬品の補充が行われている。住民は、医師や保健師の来訪時に、医薬品に関することや健康について相談することができる。

 薬の効能などを解説した手引書や予防薬として服用する際の説明文書なども整備され、初期治療や予防薬としての利用が広がっている。システム導入によって遊牧世帯からの往診依頼数が45.2%も減少した郡もあるなど、住民の健康維持・向上に役立っている。これらがモンゴル政府に評価され、国への事業移管が決まった。日本財団の国際協力事業が国家事業として引き継がれるのは初めて。モンゴル政府は全遊牧民約17万世帯への普及を目指しており、14年末までに6万世帯に配置する計画だ。

 06年から毎年、モンゴル医師研修団が富山を訪れており、配置薬についての研修を受けている。今年は遊牧民世帯で置き薬事業を実践する医師ら15人が10月に来県し、県庁での研修のあと、水橋家庭薬協同組合の役員と得意先を訪れ、薬の補充や代金回収の様子を見学。富山大学和漢医薬学総合研究所やとやま健康パーク、製薬企業も視察した。

●アジアへ広がる配置薬システム

 モンゴルでの成果を受けて、東南アジアでも配置薬システムが広がりを見せている。各国の取り組みを紹介しよう。

 タイでは、無料で医療サービスを受けることができるため、医療費が増大しており、タイ保健省では、支出の抑制を目指し、2009年1月から「伝統医療置き薬事業」を実施。国内約10,070世帯に、風邪薬や解熱薬など20種類のタイ伝統薬の入った薬箱<価格1,000バーツ(約32米ドル)>を配置している。薬の代金回収と補充は、国内のヘルスボランティア(約80万人登録)が行っている。

 ミャンマーでは、09年から「伝統薬置き薬事業」を導入した。配置薬システムを独自にアレンジし、各家庭ではなく、村落単位に、7種類の伝統医薬品の入った薬箱を配置。それを住民が共同利用しているのが特徴だ。09年から11年までの3年間で全14州の各500村、合計7,000村に配置。現在、ミャンマー保健省と日本財団との協議によって、14年末までに各州1,500村への拡大、また、ある州では、小学校を中心としたコミュニティでの置き薬の活用も検討されている。

 ベトナムでは、山岳地帯などの6村で伝統医薬品と置き薬システムの効果を図る統計学的なデータ採取、分析を実施するため、WHO(世界保健機関)ベトナム事務所による事前調査が始まっている。この結果に基づいて、ベトナム保健省による伝統医薬品の配布が12年4月から開始される予定だ。

 ラオスでは、2000年からユニセフや世界銀行、JICAなどの支援により、国内約5,600村へ西洋医薬品の入った応急薬箱が配布されており、日本財団では、この薬箱にラオスの伝統医薬品を組み込むプロジェクトへの支援を検討中だ。

 日本財団では、「配置薬システムは、経済的負担を強いることなく、健康の維持・向上につながる。モンゴル政府の国家事業として引き継がれることは誇るべき結果。アジア、世界のモデルケースに育っていってほしい」と話している。


▲配置薬の得意先で説明を受けるモンゴル医師研修団


問い合わせ
「モンゴル、アジア諸国での配置薬システムの導入」について
●日本財団・国際協力グループ
TEL.03-6229-5157
FAX.03-6229-5180
http://www.nippon-foundation.or.jp/
「富山発祥の配置薬システム」について
●富山県厚生部くすり政策課
TEL.076-444-3236
FAX.076-444-3498
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1208"

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