トピックス

アーカイブ

2009年 11月 18日 [ トピックス ]

No.430-2:富山発の宇宙の話題をお届け!


 国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の稼動、月周回衛星「かぐや」、宇宙輸送船「HTV」の活躍など、日本の高度な宇宙技術が話題になった今年。夜空を眺めながら、宇宙にロマンを感じた方も多いことだろう。宇宙ファンに向けて、「きぼう」で行われた富山大学大学院理工学研究部・神阪研究室の実験と、11月22日(日)に黒部市吉田科学館・プラネタリウムド−ムで開催される「宇宙に夢中! 宇宙学校・くろべ」の話題を紹介しよう。

●「きぼう」で植物を使用した初めての長期生育実験

 国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の稼動、月周回衛星「かぐや」、宇宙輸送船「HTV」の活躍など、日本の高度な宇宙技術が話題になった今年。夜空を眺めながら、宇宙にロマンを感じた方も多いことだろう。宇宙ファンに向けて、富山発の宇宙に関する話題を紹介しよう。

 富山大学大学院理工学研究部の神阪盛一郎客員教授(植物生理学)を中心とする研究チームと宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」で共同実施してきた、植物を使用した初めての長期生育実験「微小重力環境における高等植物の生活環(ライフサイクル)」が11月11日、無事終了した。

 この実験は、シロイヌナズナ(アブラナ科)という植物を0G(微小重力)の環境下に置き、種子から発芽し、成長して花を咲かせ、次の世代の種子がとれるまでの一連のサイクル(ライフサイクル)に対する重力の影響を、葉や茎の形態から遺伝子レベルに至るまで調べるものだ。シロイヌナズナは背丈が低く、ステーションの限られたスペースでも栽培しやすいことや、次の種子ができるまでの一生が約2カ月と短いこと、遺伝情報にあたるゲノムが植物ではじめて2000年に解読され、研究成果もたくさん蓄積されていることなどから、宇宙実験の成果を最大限に活用できると着目された植物だ。

 ロックウールに着床させた種子を入れた植物実験ユニットは、8月28日(日本:29日)にアメリカ・ケネディ宇宙センターから打ち上げられたスペースシャトル「ディスカバリー号」(STS-128)で「きぼう」へ輸送された。ユニットは、自動的に給水し、温度や湿度、照明(発光ダイオードの光)をコントロールできる装置で、9月10日から給水を始めて実験がスタート。13日に発芽を確認し、10月10日には茎の背丈が平均5cmに伸びた。その後、直径3mm〜4mmの花を咲かせ、莢(さや)を作り、種子もできたようだ。

 富山大学の研究室でも重力以外は、温度、湿度、照明と「きぼう」内と同じ条件でシロイヌナズナの栽培実験が行われた。その結果、宇宙では、実験開始から30日後に茎の背丈は5cmほどになったが、研究室では1cm前後と短かった。葉の枯れ具合については、宇宙のほうが遅かった。「地上では、植物は重力に逆らって成長しようとするために細胞壁を固く、丈夫にする。一方、微小重力状態では、丈夫な細胞壁を作る必要がないので、細胞壁が緩み、細胞が大きくなり、成長が速まったのではないか。エネルギーの消耗が抑えられ、老化のスピードも抑えられたのでは」と神阪教授は推察する。

 シロイヌナズナの種子や植物体は、「きぼう」で冷凍・冷蔵保存され、来年地上へ回収されて、3月に富山大学に届けられる予定。大学で細胞壁や遺伝子の解析、地上生まれの種子との違いなどを調べる実験などが行われる。

 神阪教授は、「来年、大学に届けられる植物体を使って細胞壁や遺伝子の働きを解析する。また、宇宙で誕生した種子を地上で育て、発芽率や成長を観察する予定。きぼうでの実験は、宇宙でも植物の生育環境を制御できることを証明した。将来、宇宙での植物生産を行うための必要な基礎データとなるだろう」と話している。

●富山県内初!「宇宙に夢中! 宇宙学校・くろべ」、参加者募集

 世界天文年2009記念企画として、「宇宙に夢中! 宇宙学校・くろべ」が11月22日(日)13:00〜16:30、黒部市吉田科学館・プラネタリウムド−ム(黒部市吉田)で開催される話題も紹介しよう。宇宙学校は、宇宙科学に対する理解を深めてもらうことを目的にしたイベント。日本の宇宙科学の最先端で活躍する研究者を講師に迎え、授業形式で行われる。

 1時限目は「見えないひかりでみる宇宙」をテーマに、阪本成一教授<宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究本部>、2時限目は「“はやぶさ”の壮大な宇宙の旅」をテーマに、吉川真准教授<宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究本部>の講演がある。3時限目は、2009年がガリレオによる望遠鏡での天体観測開始から400年にあたることを記念して、宇宙観測についてのパネルディスカッションが行われる。テーマは「ガリレオから400年、さらに広がる宇宙への挑戦」。パネリストは、大西浩次教授(国立長野工業高等専門学校)、阪本成一教授、吉川真准教授。

 対象は小学校4年生〜中学生(定員200名)だが、小学3年生以下でも参加できる。参加費は無料。また、子どもの付き添いの方も参加できる。参加希望の方は、黒部市吉田科学舘へ事前に申し込みを。

 黒部市吉田科学舘では「地方では貴重な体験となるイベント。最先端の宇宙科学に触れ、宇宙の研究者と楽しく語り合う1日を体験してほしい。研究者が宇宙についてわかりやすく説明し、参加者からの質問の時間もたっぷりとってある。国際宇宙ステーションの日本実験棟“きぼう”や小惑星探査機“はやぶさ”、月周回衛星“かぐや”、宇宙輸送船“HTV”など、日本の宇宙開発技術について質問してみてはいかがだろう」と話している。


▲「きぼう」でのシロイヌナズナの栽培実験
(富山大学・JAXA提供)


問い合わせ
「“きぼう”での長期生育実験<微小重力環境における高等植物の生活環>」について
●富山大学大学院理工学研究部・神阪研究室
TEL&FAX.076-445-6631
http://www.u-toyama.ac.jp/

「宇宙に夢中! 宇宙学校・くろべ」について
●黒部市吉田科学館
TEL.0765-57-0610
FAX.0765-57-0630
http://www.kysm.or.jp/

コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑