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2009年 5月 7日 [ トピックス ]

No.402-1:立山カルデラの白岩堰堤砂防施設、国重要文化財指定へ


 日本有数の急流河川・常願寺川の上流にある立山カルデラに築かれた白岩砂防堰堤が、「白岩堰堤砂防施設」の名称で、砂防施設として初めて国の重要文化財に指定されることになった。「立山・黒部」の世界文化遺産登録運動への追い風となることが期待されている。

▲白岩砂防堰堤全景(撮影:小野吉彦)

●日本を代表する砂防施設、全国初の指定

 日本有数の急流河川・常願寺川の上流にある立山カルデラに築かれた白岩砂防堰堤(しらいわさぼうえんてい)が、「白岩堰堤砂防施設」の名称で、砂防施設として初めて国の重要文化財に指定されることが平成21年4月17日、国の文化審議会において答申された。セメントが本格的に使用され始めた時代に建設されたコンクリート造りの大規模な砂防堰堤で、副堰堤を合わせた総落差108mは砂防堰堤として国内一の高さを誇る。昭和14年(1939)の竣工以来、土砂災害から富山平野を守ってきた。

 立山カルデラでは、安政5年(1858)4月9日(旧暦2月26日)の明け方に発生した飛越地震によって、4億立方mの土砂が崩壊したといわれ、天然ダムの決壊によって発生した大土石流が富山平野を襲い、甚大な被害をもたらした。富山県は常願寺川下流域への土砂流失を防ぐため、明治39年(1906)に立山カルデラでの砂防事業に着手。その後、度重なる土石流により砂防施設が壊滅的な被害を受けたため、大正15年(1926)に直轄事業として国に引き継がれた。

 白岩砂防堰堤は、立山カルデラの出口に昭和4年(1929)に建設が始まり、10年の歳月を経て竣工した。カルデラ内の厳しい現場環境、降雪のため1年のうちの約5カ月という短い工事期間のなかで大型砂防施設を建設するためには、施工の省力化、急速化が必要で、急傾斜地を連絡するインクライン(資材運搬用のケーブルカー)の建設、資材運搬用の工事専用軌道の敷設、クレーンやコンクリートミキサーなど重機の使用といった当時の砂防工事としては先進的な施工が行われた。


●「立山・黒部」の世界文化遺産登録運動へ追い風

 国重要文化財の指定は、堰堤本体と副堰堤、床固(とこがため)<※川底の浸食を防ぐために河川を横断して設けられた構造物>、方格枠(ほうかくわく)<※鉄筋コンクリート柱を格子状に組み立て、中に石などを詰めた構造物>の4つの施設・構造物。本堰堤への副堰堤、導水壁の配置、方格枠で保護された土堰堤とコンクリート堰堤の特殊な複合構造など、当時の技術力の高さを示している。
 
 指定の理由として、常願寺川の基幹砂防施設の1つとして建設され、いまなお富山平野を土砂災害から守り続けており、国土保全施設として歴史的に価値が高いことや、大型機械を駆使した大規模構造物群からなる複合砂防施設であり、近代砂防施設のひとつの技術的到達点を示すものとして重要な点が挙げられている。
 
 白岩砂防堰堤は、立山・黒部地域の世界文化遺産登録を目指し、富山県などが文化庁に提案した「立山・黒部-防災大国日本のモデル 信仰・砂防・発電」で中核的な位置を占める文化資産だ。重文指定で資産内容が充実し、登録運動にとっても追い風となる。
 
 富山県教育委員会生涯学習・文化財室では「約1世紀にわたって自然災害から人々の暮らしを守り続けてきた、立山カルデラでの近代砂防技術の歴史的・文化的価値が認められた。“砂防”という言葉は“SABO"という国際語になっている。立山砂防が、世界に広まった近代砂防技術発祥の地であることや、立山砂防の魅力を国内外に発信していきたい」話している。


▲方格枠(撮影:小野吉彦)


問い合わせ
●富山県教育委員会生涯学習・文化財室
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4434
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3009/

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