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2010年 2月 10日 [ トピックス ]

No.441-2:富山の雛人形に願いを込めて


 女の子の健やかな成長を願って飾る、愛らしい雛人形。桃の節句を前に富山ならではの雛人形を探してみた。日本一の木彫の町、井波(南砺市)にある横山一夢工房の久寿(くす)人形、富山ガラス工房(富山市)のガラス雛、とやま土人形工房の土人形の雛をクローズアップ!

▲久寿人形と横山丈樹さん

●凛とした美、気品漂う木彫の雛人形

 女の子の健やかな成長を願って飾る、愛らしい雛人形。桃の節句を前に富山ならではの雛人形を探してみた。わが家の雛人形にお出ましいただくのもいいが、今年は趣向を変えて新しい人形を飾り、春の訪れを感じてみてはいかがだろう。
 
 日本一の木彫の町、井波(南砺市)の横山一夢工房で制作している「久寿(くす)人形」は、気品漂う木彫の雛人形。日展参与を務めた工芸美術家の故・初代横山一夢さんが50年ほど前に考案し制作を始め、現在は二代一夢さんが彫刻、長男の丈樹さんが色付けを主に担当し、制作している。

 男雛、女雛ともに艶のある白い顔に優しい表情を浮かべており、見ていると心が和んでくる。彩色し金箔を張った衣装の部分も雅な雰囲気を醸し出している。顔は、白色の顔料「胡粉」を10回ほど重ね塗りし、丁寧に磨いて艶を出したあと、最後に目を描く。目は表情を決める重要なポイント。目の太さや目尻の上げ下げで表情が変わってくる。やり直すことができず、最も緊張する瞬間という。こうして精魂込めて作られた人形は、そこはかとない緊張感を含み、品をにじませて立っている‥‥。

 大きさは2種類あり、大きな男雛は高さ約23cm、女雛が約20cmで、小さなものは男雛、女雛ともに約17cm。スペースをとる段飾りと違って、床の間や棚などに気軽に飾ることができるのも魅力だ。材料となる木は地中に1,000年以上埋没していた神代ケヤキなどを使う。神代ケヤキは濃厚な黒色で力強い印象。太古のロマンを感じさせる。

 仕上げ作業に追われる横山丈樹さんは「彫刻、色付け、金箔張りとすべて手づくりのため、夏場からの制作でも毎年8対ほど。一体一体の表情が微妙に異なり、人によって優しく見えたり、凛として見えたり。人形との出会いを大切に、ぜひ工房にいらしてお選びください」と話している。

●煌めくガラス雛に魅了

 呉羽山麓にある富山ガラス工房(富山市)では、ガラス雛展「桃色のひかり」が開催されており、同工房スタッフ10名、県内在住のガラス作家10名の作品約130点を鑑賞・購入することができる。
 
 吹き抜けのギャラリーに入ると、金屏風を配置した雛壇や畳を用いた展示スペースが設けられており、和と洋が融合した独特の雰囲気が醸し出されている。男雛、女雛の一対のガラス人形は、胴体部がリング状のものや、金箔を使ったもの、香水瓶をイメージさせるもの、腕や手を大きく出したもの、球形のものなど、色や形はさまざまだが、いずれもガラス独特の輝き、造形美、作り手の思いが感じられる。富山県朝日町で採れた翡翠とガラスを調合して開発された「越翡翠硝子」を素材に使った作品なども目を引く。和のイメージがある雛人形と、透明感のあるガラスとのコラボレーションに、長い時間眺めていても飽きない。煌めくガラス雛に誰もが魅了されるに違いない。

 富山ガラス工房では、「作り手の個性や技が冴える作品をお楽しみください。ガラス雛展は2月14日までの開催ですが、以降もショップで個々の作品を販売します。ぜひお立ち寄りください」と話している。

●手づくりの温もり、とやま土人形

 富山市民俗民芸村の一角に建つ、とやま土人形工房のショールームでは、男雛、女雛一対の大きな立ち雛や、コローン、コローンと素朴な音色を響かせる土鈴雛、可愛らしい豆雛、抱き雛など、大小さまざまな土人形の雛が迎えてくれる。いずれの人形も素朴で愛らしく、思わず手にとってみたくなる。桃の節句に向けて、約30種1,000個が用意されている。
 
 伝統民芸品・とやま土人形は、江戸末期、富山藩十代藩主、前田利保が名古屋から陶工を呼び寄せ、窯を築いて焼かせたのが起こりとされる。以降、発展して、縁起物や民間信仰にちなんだもの、子ども玩具などとして数多く作られるようになった。平成9年には、最後の土人形伝承者・渡辺信秀さんから「とやま土人形伝承会」(信秀さんを講師に昭和58年に結成)へ型・技法すべての仕事が委ねられ、現在、伝承会に参加する女性27名が伝承技法や文化を後世に伝えようと活動している。

 とやま土人形工房では「粘土をこね、型に入れて成型し、約800度で8時間素焼きしたあとに絵付けして仕上げます。お雛様のほか、干支の寅や天神様、おわら土鈴、招き猫、恵比須様、干支などさまざまな土人形があります。お雛様などの絵付け体験もできますので、ぜひ挑戦ください」と話している。

 このほか、お雛様に関連するイベントを紹介しよう。高岡市中心部の守山町や木舟町など山町筋では、3月13日(土)、14日(日)<予定>に「山町筋のひなまつり」が開催される。土蔵造りの旧家や商店、資料館などに江戸時代から現代までの雛人形を展示し一般公開するもので、お雛様の町並みギャラリーといった趣き。代々受け継がれてきた貴重な雛人形を間近で眺めてみてはいかが。


▲とやま土人形工房(左)、富山ガラス工房(右)


問い合わせ
「久寿人形」について
●横山一夢工房
TEL.0763-82-0078
FAX.0763-82-5584
http://www1.tst.ne.jp/ichimu/enter.html

「ガラス雛展 桃色のひかり」について
●富山ガラス工房
TEL.076-436-2600
FAX.076-436-5735
http://www.toyama-garasukobo.jp

「とやま土人形」について
●とやま土人形工房
TEL.076-431-4464
FAX.076-433-8370
http://www.city.toyama.toyama.jp/division/kyouikuiinkai/minzokumingei/index.htm

「山町筋のひなまつり」について
●末広開発(株) 高岡町衆サロン
TEL.0766-20-0555
FAX.0766-20-0666
http://www.takaoka-st.jp/

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