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2010年 3月 31日 [ トピックス ]
No.448-2:とやまの近代歴史遺産に106件選定
「とやま文化財百選」事業(富山県教育委員会)の第6弾として、明治初期から昭和20年ごろまでの構築物を対象に「とやまの近代歴史遺産百選」が選定された。このほど刊行された冊子『とやまの近代歴史遺産』(A5判・83頁・オールカラー)では、遺産の種類や特徴をはじめ、立山カルデラ砂防堰堤群、旧井波駅舎など選定された106件を紹介している。
●郷土の誇りとして後世に伝える
「とやま文化財百選」事業(富山県教育委員会)の第6弾として、「とやまの近代歴史遺産百選」が選定された。このほど刊行された冊子『とやまの近代歴史遺産』(A5判・83頁・オールカラー)では、近代歴史遺産の種類や特徴をはじめ、立山カルデラ砂防堰堤群、旧井波駅舎など選定された106件を紹介している。
「とやま文化財百選」事業は、身近な文化財を対象に、郷土の誇りとして後世に受け継いでいくべきものを選定することで、ふるさとの文化財の価値を再認識し、地域ぐるみで保存・活用していくきっかけづくりとなることを目的にした取り組み。これまで「土蔵」、「獅子舞」、「祭り」、「年中行事」、「お城」をテーマとして取り上げてきた。
近代歴史遺産選定にあたり、『富山県近代化遺産総合調査報告書』(平成6~7年度)、『日本の近代土木遺産』などで把握された県内の近代歴史遺産を基本に、選定委員会の各委員、市町村教育委員会から候補145件が推薦された。その中から、明治初期から昭和20年ごろまでの構築物を対象に、保存状態が良好で学術的に価値が高いもの、地域住民に古くから親しまれ、保存・活用すべきもの、気軽に見学できるもの、地域を代表する特徴があり、全国的に富山県をPRできるものなどを選定基準に検討を重ねた結果、106件が選ばれた。
106件は、「治水・砂防・利水関係」(砂防ダム・治水ダム・灌漑・堤防類など)、「発電関係」(発電施設・ダムなど)、「交通関係」(道路・道路橋・隧道・運河など)、「鉄道関係」(鉄道施設・駅舎など)、「公共建築物」(官公庁・学校・図書館・病院)、「産業建築物」(工場・銀行・醸造所など)、「その他」(公園・台場)の7項目に分類されている。
冊子では、新川、富山、高岡、砺波のエリア別に各遺産(所在地、分類、竣工、構造、所有、履歴、概要)を紹介。橋やダムの形式の違い、百選分類別一覧、百選マップなども掲載されている。
●富山の近代歴史遺産は、水との闘いがキーワード
富山県は三方を山に囲まれ、山に降った雨や雪は急流河川となって富山湾に注ぐ。富山の近代歴史遺産の大きな特徴として、急流河川に応じた治水、砂防、利水などの施設が存在することが挙げられる。代表的なものとして、「立山カルデラ砂防堰堤群」(富山市有峰、立山町芦峅寺、富山市本宮)の本宮砂防堰堤は、常願寺川本流に設けられた大規模な貯砂堰堤で、日本最大の貯砂量を誇る。同カルデラ内の白岩砂防堰堤は、砂防施設において国内初の重要文化財となった砂防堰堤で、第7副堤までの落差は108mにもなる。「五厘堤」(滑川市大浦)は国内屈指の急流河川・早月川中流に設けられた石堤防で、オランダの土木技術者、ヨハネス・デ・レーケの指導で築堤。垂直に近い勾配の護岸が特徴だ。
また、灌漑用の農業用水施設が県下一円に設けられていることや、水力発電施設が数多く存在することも特徴。10門のラジアルゲート(弧状の扉が上下して開閉)をもつ庄川合口堰堤(砺波市金屋)は灌漑と発電用の堰堤で、砺波平野に水を供給し、穀倉地帯の近代化に大きな役割を果たした。円筒分水(魚津市東山・貝田新、上市町釈泉寺)は、サイフォンの原理で円筒状の構造物の中央部から湧水させ、外周部に越流させるシステムで、農業用水を正確に一定の割合で配分するための施設だ。旧下山発電所(入善町下山)は、河岸段丘の低落差と農業用水を活用した小型の発電所。大正時代の建物は赤レンガのモダンな化粧が印象的で、現在は美術館として活用されている。
都市計画事業においても運河の開削、廃川地の埋め立てなど水、川との関係が深い。富岩運河(富山市湊入船町〜西宮町・草島)は、昭和初期の富山都市計画事業によって設けられた延長約5kmの運河で、ほぼ中間にある中島閘門は上流と下流の水位を調整し船舶の運航を助ける。
そして、木造駅舎や川を跨ぐ道路橋、鉄道橋が多いことも挙げられる。旧井波駅舎(南砺市北川)は、昭和9年に加越鉄道・加越線の駅舎として誕生した。入母屋屋根の中央に宝形屋根を乗せた寺院風のユニークな外観が印象的だ。神通川に架かる笹津橋(富山市笹津)は昭和16年に建造された鉄筋コンクリートのアーチ橋で、美しいアーチが峡谷にマッチしている。井田川に架かる山吹橋(富山市八尾町)は、鋼トラス主塔をもつ吊橋。昭和5年頃に造られ、昭和30年に現在地に移設。現存する数少ない戦前の吊橋とされる。
なお、『とやまの近代歴史遺産』は、県内の公立図書館で閲覧できる。今後、富山県教育委員会生涯学習・文化財室のホームページからPDFファイルをダウンロードして見ることも可能になる。
富山県教育委員会生涯学習・文化財室では、「富山県の近代化の歩みは“明治の治水、大正の発電、昭和の都市計画”といわれ、選定の遺産もこれに関連したものが多い。身近な遺産として、再発見してほしい」と話している。
●問い合わせ
富山県教育委員会生涯学習・文化財室
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4434
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3009/