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2010年 11月 10日 [ トピックス ]

No.480-1:ブリを守れ! 富山湾ぶり資源協議会、立ち上がる!!


 富山湾の寒ブリ漁のシーズンももう間近。氷見漁港に水揚げされた寒ブリを競る、威勢のいい声が響き渡る日も待ち遠しい。漁業資源の保護及び環境保全に配慮した“新しい漁業形態”への変革を目指し、氷見市と石川県七尾市の定置網漁業者らが今秋、「富山湾ぶり資源協議会」を発足させた話題を紹介。

▲フクラギを網から逃す
灘浦定置漁業組合の活動の様子

●豊饒の海・富山湾の寒ブリ漁、間近

 富山湾の寒ブリ漁のシーズンももう間近。氷見漁港に水揚げされた寒ブリを競る、威勢のいい声が響き渡る日も待ち遠しい。ブリは春から夏にかけて日本海を北上し、秋から冬にかけて北海道沖から産卵のために南下する。その途中、能登半島が壁となり、南下するブリの多くが富山湾に入ってくる。青緑色の背に銀白色の腹を見せる魚体はたくましく、「富山湾の王者」の風格を漂わせる。日本海の荒波に鍛えられただけあって、身は締まっている。しかも産卵前で栄養を蓄え、脂がのった状態。とろけるような美味である。まさに富山湾のブリ、特に氷見の定置網にかかった寒ブリが全国にその名を轟かせる理由なのだ。

 氷見の寒ブリの名高さは、歴史のエピソードでもうかがえる。1595年11月、京都にいた加賀藩初代藩主・前田利家が氷見のブリ17本を送るよう金沢城に指示した「ブリ上納申し付状」が県内最古のブリ文書として氷見に伝わっている。また、江戸時代の落語には「なんだ、またシャケか、ブリはないのか、越中のブリはうまいぞ」と語られるほどだ。

 さて、近年、そのブリに代表される定置網の主な漁獲対象種(ブリ、アジ、サバ、スルメイカ、マグロなど)の漁獲量が減少しているという。昨年12月から今年1月末までに氷見漁港に水揚げされたブリは31.7tと前年同期の10分の1にとどまり、過去10年で最低だった。漁獲量の減少や資源状況悪化の要因は複雑だが、魚を追いかける“狩猟型漁法による乱獲”、小型魚や幼魚の漁獲増が生み出した危機と、資源枯渇を懸念する声が強い。

 そこで、氷見漁業協同組合の呼び掛けで、氷見市と石川県七尾市の70の定置網漁業者らが今秋、「富山湾ぶり資源協議会」を発足させた。漁業資源の保護及び環境保全に配慮した“新しい漁業形態”への変革を目指し、具体的な活動について協議。定置網に入ったブリの幼魚、小型魚の再放流、網の目の拡張、魚のすみかとなる藻場の再生など、漁業資源保護への取り組みを決めた。

●持続可能な漁業を目指して

 富山湾ぶり資源協議会は10月14日、ブリの幼魚・フクラギを逃す保護活動を初めて実施した。氷見市宇波の沖合約3kmで灘浦定置漁業組合の定置網に入網した約10tの魚のうち、約4.5tを再放流。フクラギ1匹の体長は30cm前後、重さ800gで、約6,000尾が海に戻された。今後も協議会のメンバーの大型定置網を中心に自主的に再放流する予定だ。ブリは成長とともに、モジャコ、ツバイソ、コズクラ、フクラギ、ガンド、ブリと呼び名が変わる出世魚。フクラギは3~4年後に大きなブリへと成長する。

 氷見漁業協同組合の廣瀬達之参事は、「富山湾は定置網漁業のメッカであり、400年も前から自然との調和を図りながら漁業を営んできた。水産業を取り巻く環境が厳しいなか、定置網に入った魚を逃すのは漁業者にとってつらく、大変な決断だが、目先の損得だけを追い求めては、資源枯渇を待つのみだ。30年先、50年先、100年先にもブリをはじめとした漁業ができる海を守っていかなければならない。生物多様性が叫ばれているが、本当に今、魚の種の保存・維持、再生可能な許容範囲のぎりぎりのところにあるのではないだろうか。そう考えると、漁業資源の保護及び環境保全に配慮した取り組みを氷見・七尾から日本海へ、定置網以外の漁業者にも広げていかなければならないと思っている」と話している。


▲ブリをデザインした観光ポスターを見ながら語る
廣瀬参事


問い合わせ
●氷見漁業協同組合
TEL.0766-74-0170
FAX.0766-72-2888
http://www.jf-net.ne.jp/tyhimigyokyo/

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