- HOME : Toyama Just Now
- トピックス
- No.292-1:「とやまの祭り百選」選定!
2007年 3月 20日 [ トピックス ]
No.292-1:「とやまの祭り百選」選定!
哀調を帯びた胡弓の音色が坂の町・八尾に響く「おわら風の盆」、雅びな調べにのって男児が舞う「下村加茂神社の稚児舞」など、「とやまの祭り百選」(とやま文化財百選事業)がこのほど選定された。18年度内に百選を紹介するガイドブックが作成されるほか、ホームページ「富山県デジタル文化財ミュージアム」でも公開される予定だ。
●「土蔵」、「獅子舞」に続く第三弾
哀調を帯びた胡弓の音色が坂の町・八尾に響く「おわら風の盆」、絢爛豪華な7本の御車山(みくるまやま)が山町筋を巡行する「高岡御車山祭」など全国に知られる祭りや、地域で大切に受け継がれてきた稚児舞、獅子舞‥‥。県内には数多くの祭りがあるが、このほど、「とやまの祭り百選」がとやま文化財百選選定委員会による検討を経て選定された。
富山県教育委員会では、平成16年度から「とやま文化財百選事業」を実施しており、地域の宝として親しまれている身近な文化財を対象に、郷土の誇りとして後世に保存・継承すべきものを選定している。今回の「とやまの祭り百選」は、「土蔵」、「獅子舞」に続く第三弾となる。
祭りの選定にあたっては、県内に伝承されている民俗芸能などを伴う祭礼のうち、(1)祭礼行事として歴史的、民俗学的に学術的価値が高いもの (2)地域の人々に古くから親しまれ、保存と継承状況が良好なもの (3)保存団体や地域の人々の熱意により、復活・再生され、継承されているもの (4)地域的な特徴が顕著で、地域や富山県を代表するもの (5)地域の活性化等に積極的に活用されているもの−−これらに該当することを基準に、選定委員と各市町村教育委員会から推薦のあった県内177件の候補から103件の祭りが選定された。103件の祭りは、民俗芸能では神楽(獅子舞)、田楽(田植神事)、風流(太鼓踊、つくりもの風流、行列風流、念仏踊・盆踊)、祝福芸、渡来芸・舞台芸(稚児舞・歌舞伎)、競技では、体力競技(奉納相撲など)、技術競技(やんさんま)などにジャンル分けされている。
●幟を立てた屋形舟を勇壮に担ぐ火のなかを渡る祭りも
県内の祭りは、大型の「つくりもの」を道具に使うことや火を道具に使うこと、獅子舞が多く伝承されていることに大きな特徴がある。大型の「つくりもの」を道具に使う祭りとして、豊漁祈願などに提灯を三角形に飾り付けた大型の行灯(タテモン)を引き回す「魚津のタテモン行事」(魚津市・諏訪神社:8月第1金曜・土曜)をはじめ、贅を尽くした彫刻や金工などが目を引く各地の曵山祭、夜空を焦がす幻想的な大型行灯のケンカが見どころの夜高祭りなどが挙げられる。
火を道具に使う祭りでは、約550年の伝統を持つ奇祭「生地たいまつ祭り」(黒部市・新治神社、神明社:10月26日〜27日)も圧巻。えびすと大黒を乗せて提灯などで飾られた2台の屋形船と神輿の巡行や、高さ2〜3mの数百本の松明を新治神社の参道に倒し、その中を厄年の男衆が神輿を担いで渡る神事が行われる。また、「吉原の恵比寿祭り」(入善町・吉原神社:8月最終金曜・土曜)もユニークだ。北前船を模した屋形舟を若者が担ぎ、村内を廻り、神社に納めるというもので、周囲に波しぶきをあしらった幔幕を張りめぐらし、中央に朱塗りの鳥居を設けた屋形舟が目を引く。2日目の最後に神社に入る際、鳥居前で火渡りが行われる。獅子舞については、INTの昨年3月の記事(No.239-2全国屈指の獅子舞県・富山、「とやまの獅子舞百選」選定!!)を見ていただきたい。
子どもが主役の祭りも数多く、渡来芸では、京都賀茂神社から伝えられたとされる「下村加茂神社の稚児舞」(射水市・下村加茂神社:9月4日)が印象的。顔と手におしろいを塗り、額の中央と両頬に紅をつけた男児4人が稚児担ぎの肩車にのって鉾とともに村内を巡行したあとに神社に入り、太鼓や笛の雅びな調べに合わせて「鉾の舞」や「胡蝶の舞」などを舞うもので、男児のあどけない姿が微笑ましい。行列風流の「赤浜の菖蒲打(ショーブツ)」(滑川市赤浜:5月4日)にも地域の子どもたちが参加する。子どもたちが菖蒲を入れた藁の棒で各家の玄関前で地面を叩きながら「ショーブツ、ショーブツ、5月のショーブツヤーイ」と唱え、駄菓子をもらいながら家々をまわる。家々では、この地面を叩く音を家の中に響き入れ、福を招き入れようとする。「利賀の初午行事」(南砺市利賀上村:1月中旬)は、子どもたちが藁で仕立てた馬の頭を持って家々を回り、家内安全と豊作を祈願する行事。子どもだけですべての神事が執り行われるという。地域の祭りに子どもたちが参加することは、ふるさとを愛する心の育成にもつながり、大変意義深いことだ。行事が大切に受け継がれていってほしい。
富山県独自の行事とされるのが、各地の神社・仏閣のおめでたいときに行われる祝福芸「やらやら・あがりもん」である。朝日町・天祥院の仏さまの御開帳に合わせた「米吊り奉納」(朝日町山崎:7年に1度、10月に開催)では、米俵・酒樽などの入った長持を吊る「吊り方衆」が、米吊り唄に合わせて「ドッコイ、ドッコイ」の掛け声とともに3歩進んで2歩下がる独特の足運びで練り歩く。ゆったりとした所作が印象的だが、最後は寺の前の階段を一気に登り、米俵・酒樽などを奉納するという。
富山県教育委員会生涯学習・文化財室では、「18年度内にとやまの祭り百選を紹介するガイドブックを作成し、県内の教育委員会や図書館、美術館・博物館などに配布。またホームページ<富山県デジタル文化財ミュージアム>でも公開する。県内の方々はふるさとや地域の祭りを学び、再認識するきっかけに、また県外の方々は富山の祭り・文化に触れるきっかけにしてほしい」と話している。
問い合わせ
●富山県教育委員会生涯学習・文化財室
TEL.076-444-3456
FAX.076-444-4434
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/3009/