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2006年 8月 9日 [ トピックス ]
No.260-2:富山の配置薬システム、モンゴルの遊牧民の暮らしに役立つ
江戸時代から300年余の伝統を誇る富山の配置薬システム「先用後利」が、モンゴルの遊牧民の医療サービス向上に役立っている。先用後利とは、薬の入った薬箱を家庭に置いてもらい、次に訪問したときに使った分だけの薬の代金をいただき、薬を補充していく、富山生まれの独特のシステムだ。
●1万世帯にモンゴル伝統薬を入れた薬箱を配布
江戸時代から300年余の伝統を誇る富山の配置薬システム「先用後利」が、モンゴルの遊牧民の医療サービス向上に役立っている。先用後利とは、薬の入った薬箱を家庭に置いてもらい、次に訪問したときに使った分だけの薬の代金をいただき、薬を補充していく、富山生まれの独特のシステムだ。
国際的な援助活動を続けている日本財団は、2004年1月から「モンゴル伝統医療普及プロジェクト」を実施。同財団が設立した現地のNGO「ワンセンブルウ・モンゴリア」を通じて、家庭による初期治療(セルフメディケーション)を目的に、ボルガン県、トゥヴ県、ドンドゴビ県など5県15郡の1万世帯(約5万人)にモンゴル伝統薬を入れた薬箱を試験的に配布している。薬箱に入っているのは、胃腸薬や風邪薬、解熱剤、下痢止めなど12種類の薬(各9日分)のほか、アルコール、脱脂綿、包帯、体温計、薬の使用説明書など。薬箱1キットは日本円にして1,000円ほどで、これはモンゴルで購入できる同程度の効能をもつ西洋医薬品価格の8分の1から20分の1の価格。“薬売さん”役となるのは地方の国立病院の医師たちで、遊牧民の居住地をまわり、薬の配置や代金の回収、薬の補充を行っている。
1992年に社会主義体制から市場経済体制に移行したモンゴルでは、急激な変化に伴い、極端な財政危機に陥った。それまで無料だった医療サービスも有料化され、西洋医薬品も不足するなど、医療サービス自体の質が大幅に低下したという。特に地方の遊牧で生計を立てている住民は、医療施設のある市街地から遠く離れた草原で生活しており、また、年に数回の現金収入に頼る生活のなかで、病気にかかったり、けがをした場合、費用の問題もあって必要な医療サービスを充分に受けることができないという。モンゴル伝統医療普及プロジェクトは、モンゴル全国民の誰もが容易に受けられる安全で有効な医療サービス体制のモデルをつくり、普及させることを目的としており、モンゴル保健省や医療専門家から大きな期待が寄せられている。
●配置薬の使用率、代金回収率が上昇
薬箱を配布された遊牧民の家庭では、お金が手元になくても必要なときにすぐに使える配置薬が重宝され、先用後利への理解が年々深まり、システムも定着してきている。遊牧民からは、「キットの薬は値段が高くないので、経済的な負担はない」、「遊牧で移動する際にキットは持っていく」などと好評のようだ。
ワンセンブルウ・モンゴリアの6月の調査では、今回訪問できた8,091世帯のうち、80%にあたる6,471世帯で薬が使用され、82.6%の5,342世帯で代金が回収できるなど、前年度よりも使用率、回収率が伸びている。回収できなかった理由は現金の持ち合わせがなかったりということで、悪意のあるケースはほとんどないという。信用を前提に成り立つ配置薬システムは、モンゴルの人たちの義理堅さもあり、うまく機能しているようだ。
富山とモンゴルとの交流も進んでいる。今年3月には、モンゴルの医師研修団が富山を訪れ、製薬会社の製造工場や富山大学などを見学したり、“売薬さん”の顧客訪問に同行したりしながら、富山伝統の配置薬の仕組みやノウハウを学んだ。
日本財団・国際協力グループでは「このプロジェクトは、日本で300年以上にわたり受け継がれ、現在も活用されている置き薬の手法をモンゴルに導入し、定着させることが特徴の一つ。3年目に入り、大きな手ごたえを感じている」と話している。
問い合わせ
●日本財団・国際協力グループ
TEL.03-6229-5181
FAX.03-6229-5180
http://www.nippon-foundation.or.jp/