トピックス

アーカイブ

2006年 5月 31日 [ トピックス ]

No.250-2:北前船ゆかりの港町・岩瀬がいま熱い


 富山市北部、富山湾に面した港町・岩瀬が、全国初の本格的な次世代型路面電車として開業した富山ライトレールとともに注目されている。江戸末期から明治にかけて北前船の一大寄港地として栄えた岩瀬地区。その中心部、石畳の美しい岩瀬大町通り、新川町通り周辺では、町並み再生の取り組みが進められており、回船問屋や肥料商、北洋漁業で活躍した旧家、土蔵群、出格子を備えた伝統的家屋など、往時を偲ばせる景観を楽しみながら散策できる。
▲森家土蔵群

●岩瀬の新しい文化発信拠点・森家土蔵群

 全国初の本格的な次世代型路面電車として4月に開業した富山ライトレール。富山駅北からスマートな車体に揺られること24分で終点・岩瀬浜駅に到着である。富山市の北部、神通川の河口に位置する岩瀬地区が、この富山ライトレール開業とともに注目されている。江戸末期から明治にかけて北前船の一大寄港地として栄えた港町・岩瀬の中心部、石畳の美しい岩瀬大町通り、新川町通り周辺には、森家や馬場家、米田家など、回船問屋や肥料商、北洋漁業で活躍した旧家、出格子を備えた伝統的家屋が点在しており、往時を偲ばせる景観を楽しみながら散策できる。

 現在、大町通り・新川町通り周辺では貴重な伝統建築を修復し、美しい町並みを再生させる取り組みが進められている。この動きを象徴するのが、漆喰の壁に太い梁をもつ森家土蔵群。にしん蔵として100年以上前に建てられた、奥行き約60mの土蔵に酒店、ガラススタジオなど4つの空間が広がり、独特のムードを醸し出している。創建当時の工法にこだわった修復はいまも続けられており、職人が土壁をこねる作業が印象的だ。

 土蔵に入店する酒商・田尻本店で圧巻なのが、壁一面をガラスで被った空間。これは長さ18mにも及ぶ特大セラーだ。内部には蔵元直送の富山の地酒をはじめ、ワイン、焼酎などがずらりと並ぶ。

 土蔵の大空間で挽きたて、打ちたて、ゆでたてのそばを味わえるのが利賀そば・なかじま屋。自家製粉した利賀産のそば粉を使ったそばは、喉ごしのよさが自慢。

 Taizo Glass Studioは、富山ガラス造形研究所一期生のガラス作家・安田泰三さんのスタジオ。ガラスの中にレース模様を封じ込める独特の技法を用いた花器は繊細な仕上がりだ。釋永岳陶芸工房は越中瀬戸焼の窯元に生まれた釋永さんの工房。土蔵のそばの旧江尻家(旧肥料にしん商)を改築したギャラリーには、酒器や花器、コーヒーカップなどが和の空間で展示・販売されている。
                        
●出格子「スムシコ」が印象的な伝統的家屋

 岩瀬の再生、町づくりの中心的役割を果たしているのが、2004年に地元有志によって設立された「岩瀬まちづくり株式会社」(代表:桝田隆一郎桝田酒造店専務)。岩瀬では、土地の所有権が複雑な貸地が多く、家屋の建て替えが難しいことから古い空き家や空き地が近年目立ってきたという。同社では、土地の所有権・賃貸権をまとめ、空き家となった伝統的家屋を修復したあとに賃貸や売却する事業を行い、新規開店や若者の定住を促している。地域の伝統や個性を生かし、住んでいる人が誇りに思える地域、心地よく感じられる町にすることが同社のミッションだ。「バスに乗った観光客がただたくさん訪れる町というのではなく、大人の文化を味わえる町にしたい。公共交通の富山ライトレールを使ってふらっと訪れてもらい、港町・岩瀬の歴史に触れたり、伝統的家屋やガラス作品、陶芸を見たり、海沿いをのんびり歩いたりしてほしい」と桝田さんは話す。

 町なかでは、竹のすだれでつくられた出格子「スムシコ」や、1階庇端の破風板などを備えた岩瀬独特の伝統的家屋の復元が目覚ましく、興趣をそそられる佇まいを観賞しながら町並み散策が楽しめる。このほか、吹き抜けの大空間に組まれた梁、家紋と竜虎の鏝絵が施された道具蔵など見ごたえのある北前船回船問屋「森家」、常夜燈をモデルにした展望台から岩瀬の家並みや富山港、立山連峰が一望できる「富山港展望台」、岩瀬運河を眺めながら魚介料理が楽しめる「岩瀬カナル会館」など見どころ、立ち寄りポイントは少なくない。港町・岩瀬の町並みを眺め、点在する歴史的遺産を訪ねる小さな旅へ出掛けてみたい。

▲桝田隆一郎さん(左)と安田泰三さんが
土蔵で吹きガラス談義


問い合わせ
●岩瀬まちづくり株式会社
TEL.076-437-9916(桝田酒造店・桝田隆一郎)
FAX.076-438-6763

●森家土蔵群
酒商・田尻本店 TEL.076-437-9674
利賀そば・なかじま屋 TEL.076-438-0065
Taizo Glass Studio TEL.076-426-9340
釋永岳陶芸工房 TEL.076-415-3389

●北前船回船問屋「森家」
TEL&FAX.076-437-8960

コメント

その他のトピックス

ページの先頭へもどる↑