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2005年 1月 12日 [ トピックス ]
No.178-1:散居村の屋敷林を守れ−富山県の取り組み
●台風23号による屋敷林(カイニョ)の倒木被害は約20,000本
平成16年10月20日夜から21日未明にかけて、県内に暴風雨をもたらした台風23号。最大瞬間風速は40.6mを記録し、各地に大きな被害を及ぼした。美しい散居景観が広がる砺波平野では、北東からの強風によって、屋敷林(カイニョ)の倒木など甚大な被害を受けた。砺波市と南砺市内では、スギの大木が根こそぎ倒れ、作業小屋や塀を直撃したケースや、周囲の田に倒れたものなど、約20,000本の屋敷林が被害を受けたと推定されている。
そこで富山県では緊急の対策として、「散居景観を活かした地域づくり協定」を締結する被災地区の屋敷林の再生活動を支援することを決定。200を超える地区に「散居景観保存活動特別補助金」の交付を予定している。県の予算額は3,200万円で、倒木の処理から敷地整備や植樹など、地区で取り組むさまざまな活動に活用することができる。
●「高(たか:土地)は売ってもカイニョは売るな」が残してきた景観の保存を
砺波平野の集落は、緑豊かな屋敷林に囲まれた家々が点在する美しい散居集落だ。その風景は、平成16年11月30日まで実施していた富山県イメージアップキャンペーンでも紹介していたが(2004.10.6記事)、日本の稲作農村を代表する景観の一つといえる。100mほどの間隔を置いて農家が点在し、一軒一軒の敷地の回りを背丈の高い屋敷林がとりまき、冬の季節風や夏の強い日差しから家を守っている。屋敷林の樹木は、冬でも葉っぱの落ちないスギを主に、ケヤキやアテ、エノキ、カシなどが植栽されており、その下には様々な生物が生息し、ビオトープとして自然の生態系を保っている。美しい散居景観の形成は、この緑豊かな屋敷林に負うところが大きい。屋敷林が少なくなったのでは、美しい散村風景の魅力がなくなってしまうだろう。
砺波平野には、「高(土地)は売ってもカイニョは売るな」という古くからの言い伝えがある。屋敷林は風雪から家を守り、かつては家を建て替える際の材料に使われたり、囲炉裏や風呂焚きの貴重な燃料として使われたりしてきた。しかし、燃料としての用途がなくなったことや、枝打ちや落ち葉・小枝の清掃の手間などがかかることから伐採や過度の枝打ちが目立つようになってきた。
近年、貴重な散居景観を守り伝えようという取り組みが活発になってきており、田園空間整備事業などが砺波地方で進められている。先述の「散居景観を活かした地域づくり協定」もこの事業の一つで、協定を結んだ地区には屋敷林の枝打ちや育成費用を助成する制度が平成14年からスタート。砺波市・南砺市の 336地区のうち、半数近くの地区で協定が結ばれている。砺波市では、市民グループなどによって屋敷林の清掃ボランティアや見学会、シンポジウムなどが催されている。また、次代を担う子どもたちを集めて、屋敷林でクリを拾ったり、カキをハサで採ったりと、屋敷林とのふれあい活動も実施。子どもたちの屋敷林への意識を高めようとしている。台風被害によって、散居景観の維持、保全に向けた気運が、しぼむことがあってはならない。今回の特別補助金制度を活用により、被害を受けた各地区において屋敷林が再生されることを望みたい。
問い合わせ
●富山県農林水産部農村環境課
TEL.076-444-3381
FAX.076-444-4427
●富山県の田園空間整備事業についてはこちら
http://www.pref.toyama.jp/branches/1633/main/tonamino.html