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2005年 2月 16日 [ トピックス ]

No.183-2:地場産業の技術を生かしたアルミ製エコヨット、富山から“出艇”


●富山産のエコヨットで大海原へ

 富山県の地場産業であるアルミ製造の技術を生かしたディンギー(小型ヨット)の開発が、富山アルミ製ヨット開発プロジェクト(代表:山崎祐介富山商船高等専門学校教授)によって進められている。開発は、山崎教授による“海洋教育の観点から、ジュニア用のトレーニングヨットはリサイクル可能な材料であることが望ましい”という考えから始まったもの。現在国内では、ディンギーの材質はFRP(強化プラスチック)が主流だが、廃棄やリサイクルが難しいという欠点がある。一方のアルミは、リサイクルが可能だが、ボートを製造する上で高度な技術が必要なことやコスト面などから国内ではこれまで普及してこなかった。
 そこで、2003年にスタートしたのが、富山アルミ製ヨット開発プロジェクト。アルミ工作技術に定評のある倉谷アルミ工作所(新湊市)の倉谷博社長や富山商船高専ヨット部OBで日本ジュニアヨットクラブ連盟の黒嵜有二氏らが参加した。ヨットの材質には、軽い素材で、加工のしやすさや、チタンと同様の耐食性、耐久性などの特長からアルミ合金(A5052)を採用。試作を重ねながら、性能や強度、品質を実証してきた。また、日本財団の助成による「アルミ合金ヨットの開発と普及」事業としてジュニア向けディンギー「アリート」(Alyt:アルミヨットを略した造語)の開発にも取り組んでおり、2004年秋にはプロトタイプが完成した。全長3.5m、全幅1.5m、艇体重量約50kg(セイルはペットボトルからの再生布)で、ジュニアヨット活動団体へ貸し出されている。利用者からは、「波や風に強く、スピードも出る。乗り心地もよい」と好評だ。


●ヨットで育む環境意識の高い人材−海洋教育

 プロジェクトでは、2月10日(木)から4日間、千葉・幕張メッセで開催された国内最大のボートショー「第44回東京国際ボートショー」(主催:社団法人日本舟艇工業会)で2つのクラスにそれぞれ完成品を出展し、来場者にアルミ合金製ヨットの性能や魅力を紹介した。山崎教授は「国内外のメーカーや来場者から高い評価を得た。これは、欧米で一般的に普及しているアルミ合金製ヨットの国内での普及の第一歩。会場で聞かれたさまざまな意見を今後の製作に生かしていきたい」と語る。製作を担当した倉谷社長は、「最先端のアルミ加工技術をめざし、そこで培ってきたアルミ溶接などの技術を使ってヨットを製作してきた。量産できれば、FRP艇と同じくらいのコストも可能」と目を輝かす。
 プロジェクトのメンバーは、「ヨットの魅力の一つは、人間のあるべき姿、自然と対話しながら、人間と自然の関係、自然環境の大切さなどを学ぶことができる人格形成のための海洋教育にある。また、青少年の体力や知力、情緒の向上にも大きく貢献できる。循環型社会の構築が叫ばれているが、実際に子どもたちが海へ出てみれば、水質汚染などの環境問題についても自然に関心を持つようになるだろう。そこでは、廃棄やリサイクルに難のあるFRP艇を使うよりも完全リサイクルが可能なアルミ合金製の艇のほうが教育機材として適している。環境負荷が少なく、完全リサイクルできるヨットで、人と地球にやさしい環境づくりを進めていきたい」と熱く語っている。
 現在、同プロジェクトでは、開発中のジュニア向けのほか、大人向けのアルミ合金製ボートの製作も企画段階にある。「このようなボートはどうか」というアイデアや、ボートに関心のある人からのメッセージも募集しているので、ぜひ提案してほしい。




問い合わせ
●富山アルミ製ヨット開発プロジェクト事務局
TEL.0766-82-7711
FAX.0766-82-7722
倉谷アルミ工作所
http://www.kuratani.co.jp/
アイデアやメッセージは、同社第2工場へ
E-mail:kuratani@kuratani.co.jp

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