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2006年 1月 25日 [ トピックス ]
No.232-2:全国初の無花粉スギ「はるよこい」の増産を本格化
富山県林業技術センターの林業試験場では、全国で初めて開発した無花粉スギ「はるよこい」の増産を雪解け後の3月から本格化させる。また、木材試験場では、県産材や全国一の輸入量を誇る北洋材の新たな技術開発などを目的に性能評価試験棟、製品開発試験棟、木質構造試験棟などの整備が進められている。
●花粉症の抜本対策として期待の無花粉スギ
富山県林業技術センターの林業試験場(立山町)と木材試験場(射水市)の話題を紹介しよう。林業試験場では、全国で初めて開発した無花粉スギ「はるよこい」の増産を雪解け後の3月から本格化させる。まずは、これまで試験場で育成してきた80本ほどのクローン苗を県営の砺波採穂園に移植し、台木として大切に育て、1本につき30〜50本の挿し木用の穂を採る予定。最終的には台木を500本まで増やし、23年度から500本の苗木を安定して供給できる体制を整え、県内の公園などに緑化用として普及させる計画だ。
無花粉スギとは、文字通り花粉がなく、花粉を飛ばさないスギ。平成4年、試験場の研究員が富山市内の神社で偶然に無花粉スギ(タテヤマスギの突然変異体)を発見し、採取した種子から「はるよこい」を育成した。
なぜ無花粉なのか。これは雄花の劣性遺伝子によるもので、花粉の基となる花粉母細胞は作られるが、途中から花粉粒が肥大していき、最後にはまったく花粉がなくなってしまうという性質をもっているため。このほか、“初期成長がよい”、“挿し木の発根能力が高い”などの特徴も持っている。平成15年には農林水産省に品種登録を出願しており、現在審査中だ。
「花粉症対策の一環として“はるよこい”のクローン苗育成のほか、“精英樹”という雪に強いタテヤマスギ同士の交配や、“はるよこい”と“精英樹”の交配によって、遺伝的に優れた新しい無花粉スギの選抜にも取り組んでいる」と試験場では話している。
●県産材を使った積雪、地震に強い住宅の研究開発へ
県産材や全国一の輸入量を誇る北洋材の新たな技術開発、木材・建築業界への技術支援、一般への木材利用の普及啓発を推進するため、木材試験場では、平成 16年度から同試験場内で、性能評価試験棟、製品開発試験棟、木質構造試験棟、ボイラー・乾燥試験棟などの整備が進められている。
平成17年3月に完成した性能評価試験棟はカラマツの大断面集成材(多数の木材・角材を接合して作った木材)の構造躯体が特長。柱と梁はミズナラの木栓で接合するなど、金物を極力使用せずに、高い耐震性と耐久性を確保。棟内には、木材の防カビ試験などの生物化学試験エリアや木材化学試験エリアなどが設けられている。
試験棟のなかで注目したいのが、積雪、地震に強い住宅構造(耐雪工法・耐震工法・新金物工法等)などの研究開発や技術支援を目的とする木質構造試験棟 (18年度完成予定)だ。県産材を用いた大断面集成材による木造建築物の中には、2階建て住宅の構造物(幅4×高さ6m)の耐震性を評価できる「水平振動台」や、耐力壁の配置・床の影響など住宅全体(幅8×高さ8m、2階建て)の強度性能を評価できる「構造物負荷システム」、床組や大断面集成材接合部の強度試験を行う「反力床・多点負荷装置」、住宅の壁の断熱性や結露の発生状況を試験できる「断熱防露性能測定装置」などの試験研究機器が設けられる。
水平振動台は、実物大住宅(幅4×高さ6m)で約1.5mまでの屋根雪を想定した耐震性実験が可能。阪神淡路大震災など過去の地震の振動の波形を再現して検証できるのもポイントだ。公的な研究機関では全国で4カ所ほどしかなく、北陸では初めての導入となる。
阪神淡路大震災や新潟県中越地震などを契機に地震に強い住宅の開発は進んでいるが、積雪時の耐震性の研究はあまり行われていないのが現状。これらの試験棟により、積雪、地震に強い安全住宅の研究開発に期待したい。
問い合わせ
●富山県林業技術センター・林業試験場
TEL.076-483-1511
FAX.076-483-1512
http://www.fes.pref.toyama.jp/
●富山県林業技術センター・木材試験場
TEL.0766-56-2815
FAX.0766-56-2816
http://www.pref.toyama.jp/branches/1640/1640.htm