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2009年 2月 10日 [ トピックス ]

No.390-1:越中福岡の菅笠製作技術、国の重要無形民俗文化財に


 高岡市福岡町で400年以上にわたって受け継がれている菅笠作りが、「越中福岡の菅笠製作技術」として国の重要無形民俗文化財(民俗技術の分野)に指定されることが決まった。これまで富山県内には、国の重要無形民俗文化財が5件(民俗芸能1件、風俗慣習4件)あり、「越中福岡の菅笠製作技術」は6件目の指定。民俗技術の分野では、県内で初めての指定となる。

●原料の栽培から生産までの一貫体制

 高岡市福岡町で400年以上にわたって受け継がれている菅笠作りが、「越中福岡の菅笠製作技術」として国の重要無形民俗文化財(民俗技術の分野)に指定されることが決まった。これまで富山県内には、国の重要無形民俗文化財が5件(民俗芸能1件、風俗慣習4件)あり、「越中福岡の菅笠製作技術」は6件目の指定。民俗技術の分野では、県内で初めての指定となる。

 菅笠とは、スゲ(カヤツリグサ科スゲ属)を使って編んだ笠で、民謡踊り用の花笠、富士笠、三度笠などが製品として知られる。福岡町では、原料となるスゲの栽培から笠骨作り、笠縫い、仕上げ、出荷までの全工程が集約的に行われており、菅笠作りの一連の作業はすべて手作業。ひご状に加工した竹を放射状(大半が円錐状)に巧みに組み立てる笠骨作りと、スゲを笠骨に丁寧に縫いつけていく笠縫いの作業を経て、一つの菅笠が出来上がる。男性が笠骨作り、女性が笠縫いと分業方式で効率的に生産。伝統的な菅笠製作技術がよく伝えられており、国内の笠の製作技術、特に縫い笠の製作技術を考える上で重要と評価された。

 町での菅笠生産の起こりは室町時代。河川の氾濫によって沼地が多く、良質のスゲが自生していたことからとされている。江戸時代前期には加賀藩の奨励を受けて生産が本格化し、最盛期の幕末には年間210万蓋(かい/「枚」と同じ意味)が出荷された記録も残っている。「加賀笠」の名で全国各地に販売され、本州日本海側に点々とみられた菅笠の製作地にも製作面で影響を与えたとされる。

 戦後は、ビニール傘や合羽などの普及によって生産量は減ったが、昭和30年代まで100万枚を上回っていた。現在では、農業用や民芸・芸能用品として年間6万枚ほどの出荷数だが、全国シェアの9割以上を占めている。昨年10月には、技術の伝承と後継者育成に向けて、菅笠生産者ら約30名で構成した「越中高岡の菅笠製作技術保存会」が設立された。

●菅田と菅干の景観は文化的景観に選ばれている

 スゲの栽培を紹介すると、9月下旬〜10月上旬、小矢部川左岸の福岡町地域の谷あいに広がるスゲ田に苗が植え付けされ、翌年7月中旬に刈り取りの時期を迎える。約2mの背丈にまで成長したスゲは刈り取り後、すぐに天日に干される。1週間ほどかけて白くなるまで脱色・乾燥した後、菅笠の原料に使われる。福岡町地域の馬場、加茂、下向田、西明寺でのスゲ干しの風景は、「福岡町の菅田と菅干」として平成15年に文化庁で実施された「平成17年施行・重要文化的景観の選定制度」の事前基礎調査で重要地域に選定。日本人のふるさとや心の原風景にも通じる文化遺産として位置付けられている。
 高岡市では、福岡小学校で菅笠作りの体験教室を開いているほか、スゲの転作栽培を奨励するなど、支援に力を入れている。高岡市福岡町にある福岡歴史民俗資料館と福岡観光物産館で菅笠作りの歴史や製品に触れることができる。

 高岡市教育委員会文化財課では「昨年11月に国指定史跡の答申をいただいた加賀藩主前田家墓所(前田利長墓所)に続き、菅笠製作技術が国指定を得たことはまさに記念すべき出来事。開町400年の節目の年に、幸先のいいスタートを切ることができた。ブランド力・希少価値の向上に弾みがつき、ものづくりのまち高岡の魅力を深める推進力になるものと考えている」と話している。



▲乾燥作業


問い合わせ
●高岡市教育委員会文化財課
TEL.0766-20-1463
FAX.0766-20-1667
http://www.takaoka.or.jp/

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