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2011年 5月 11日 [ トピックス ]

No.505-2:富山県立大学発のベンチャー企業「(株)TOPUバイオ研究所」誕生!


 富山、石川両県の産学官連携事業「ほくりく健康創造クラスター」の成果をもとに、富山県立大学発のベンチャー企業「(株)TOPU(トップ)バイオ研究所」が設立された。医薬品の安全性評価用物質(グルクロン酸抱合体)や疾病診断用酵素・酵素チップなどの実用化を目指す。同クラスターからのベンチャー設立は県内初となる。

▲グルクロン酸抱合体量産技術の比較

●医薬品の安全性評価用物質や疾病診断用酵素チップの実用化を目指す

 富山、石川両県の産学官連携事業「ほくりく健康創造クラスター」の成果をもとに、富山県立大学発のベンチャー企業「(株)TOPU(トップ)バイオ研究所」が設立された。医薬品の安全性評価用物質(グルクロン酸抱合体)や疾病診断用酵素・酵素チップなどの実用化を目指す。同クラスターからのベンチャー設立は県内初となる。

 「ほくりく健康創造クラスター」は文部科学省の「知的クラスター創成事業(第Ⅱ期)」として、両県の大学、公的研究機関、企業が参加して平成20年度から5カ年計画でスタート。国際的競争力のあるライフサイエンスの研究開発拠点を構築し、その研究成果を両県の機械産業、医薬品産業などに波及させ、国際的な医療機器、医薬品産業を形成することや、観光産業や食品産業などとの融合により、裾野の広い健康関連産業を創出することを目指している。

 「ほくりく健康創造クラスター」では、県立大学工学部生物工学科の榊利之教授が、医薬品などの安全性評価用物質(グルクロン酸抱合体)の安価な製造法を開発した。医薬品は体内に入ると、グルクロン酸(肝臓で生成されるブドウ糖の酸化物)と結合し、グルクロン酸抱合体(グルクロン酸と医薬品が結合した物質)として代謝される。グルクロン酸抱合体は安全な物質と考えられていたが、稀に人体に有害な物質になることがあるため、米国食品医薬品局(FDA)から2008年、「医薬品代謝物の安全性に関するガイダンス」が出され、評価基準が厳しくなった。医薬品メーカーは、医薬品そのものの安全性だけでなく、代謝物の安全性評価が求められている。榊教授は、体内の代謝物であるため、製造が困難で、大型プラントでも数mg単位でしか製造できなかったグルクロン酸抱合体を、小型プラントで遺伝子組み換え酵母を用いて、大量に低コストで製造できる技術を確立した。グルクロン酸抱合体は、医薬品が体内で代謝された後の安全性検査に活用できる。

 また、同大学工学部生物工学科の淺野泰久教授は、血液中のアミノ酸からメタボリックシンドローム、肝臓病などを同時に診断する酵素チップの開発を進めている。これらの病気の診断は、まず血液を採取し、液体クロマトグラフィーなどの大型の分析装置を用い、それぞれの病気ごとに行われているが、淺野教授の研究チームでは酵素を用い、指先からのわずかな血液で複数のアミノ酸を同時に測定する小型機器の開発に取り組んでいる。なお、フェニルケトン尿症診断キットはすでに実用化されている。

 (株)TOPUバイオ研究所では、グルクロン酸抱合体の効率的な製造法に関する共同研究や血液中のアミノ酸濃度からメタボリックシンドロームなどを診断できる酵素の製造に関する共同研究を進め、グルクロン酸抱合体の製造・販売、疾病診断用酵素及び酵素チップの製造・販売を事業化。3~4年後の売上高5億円、欧州や北米の製薬メーカーなどとの取引を目指す。本社は、配置薬大手の広貫堂に置き、同社の大野正廣取締役が代表取締役を務める。

●世界から注目される「薬都とやま」として飛躍することを目指して

 富山の医薬品産業は、配置薬業に始まる300年以上の歴史をもつ伝統産業。県内には、新薬開発型メーカー、特殊剤型メーカー、ジェネリックメーカー、大衆薬メーカー、配置薬メーカー約90社と100を超える工場が集積する。

 薬事法改正に伴う受託製造の拡大やジェネリック医薬品の製造、新製剤の開発などによって、近年、医薬品生産額が増加し、平成21年には5,736億円と全国2位となっており、全国の生産額(6兆8,196億円)の8.4%を占めるまでになった。設備投資も活発な動きを見せており、平成23年以降600億円を超える投資が予定されている。

 県では、国内のみでなく世界から注目される「薬都とやま」として飛躍することを目指し、国際交流などの取り組みを加速させている。医薬品や化学、バイオ関連企業、研究所が集積する世界の薬都、スイス・バーゼル地域に、平成21年10月、「富山県薬都バーゼル友好交流訪問団」を派遣し、バーゼル・シュタット、バーゼル・ラントシャフト両州政府と交流推進に関する宣言、協定書に調印。また、昨年10月には、スイスをはじめ、国内外から世界的に著名な研究者を招き、「第1回富山・バーゼル医薬品研究開発シンポジウム」を開催し、製剤技術やバイオサイエンスなどに関する情報・意見交換などを行い、学術交流を深めた。

 富山県商工労働部商工企画課では、「富山県立大学で“ほくりく健康創造クラスター”の研究の実用化を目指すベンチャー企業が誕生した。世界から注目される“薬都とやま”を目指す富山県としては、クラスターの研究成果が世界に認められ、300年以上の歴史をもつ“くすりの富山”をバックボーンに、大きく飛躍してほしい」と話している。


▲株)TOPUバイオ研究所の会社概要を説明する大野代表取締役(4月11日の事業説明会)(左写真)/
左から榊教授、大野代表取締役、古市先生(ほくりく健康創造クラスター事業総括)、淺野教授(右写真)


問い合わせ
●(株)TOPUバイオ研究所
TEL.076-424-2285
FAX.076-424-2590

●富山県商工労働部商工企画課
TEL.076-444-3245
FAX.076-444-4401
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1301/

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