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2012年 1月 11日 [ トピックス ]

No.539-1:水資源豊富な富山、小水力発電へ加速


 3,000m級の山々から流れ下る豊富な水、縦横に張り巡らされた農業用水……。豊富な水資源に恵まれた富山県は、クリーンエネルギーのパイオニア県。水力発電に利用可能な水資源の量を発電電力量に換算して表した包蔵水力は全国第2位で、県内では農業用水などを利用した小水力発電施設の整備が加速している。また、県の「小水力発電技術開発促進モデル事業」で、黒部市の東洋ゼンマイ(株)が「ゼンマイ式小水力発電装置」を開発。今春から実証実験を始める。

▲山田新田用水発電所(仮称)のイメージ図

●急流河川と豊富な水を活用し、クリーンエネルギーを

 3,000m級の山々から流れ下る豊富な水、縦横に張り巡らされた農業用水……。豊富な水資源に恵まれた富山県は、クリーンエネルギーのパイオニア県。水力発電に利用可能な水資源の量を発電電力量に換算して表した包蔵水力は岐阜県に次いで全国第2位で、県内では農業用水などを利用した小水力発電施設の整備が加速している。

 小水力発電とは、身近な河川や農業用水の小さな落差を利用して発電する方式で、最大出力が1,000kW以下のもの。CO2の排出量が極めて少なく、環境負荷が小さいことや、落差があれば繰り返し発電できるなどの特徴がある。太陽光や風力に比べて気象変化の影響が小さく、昼夜、年間を通じて安定した発電が可能な点も大きな魅力だ。土地改良区が小水力発電を行う場合には、発電による電力によって分水ゲートの開閉や揚水機場、農業用水利施設、発電施設の管理に利用できるほか、売電収益によって土地改良区が管理する施設全体の維持管理費に充てることができる。

 県内では現在、農業用水などを使った小水力発電所16カ所が運転しており、このうち県が整備したものとして、昭和62年12月に全国に先駆けて運転を始めた安川発電所<砺波市>など、県営かんがい排水事業で整備した小水力発電所が4カ所、地域新エネルギー等導入促進事業で整備した小水力発電所が1カ所(仁右ヱ門用水発電所<立山町>)あり、県企業局や土地改良区などで管理されている。

 今年中に宮野用水発電所<黒部市>や庄発電所(仮称)<砺波市>、平成25年3月には山田新田用水発電所(仮称)<南砺市>が運用開始する予定。これらを含めて平成28年度末までに県や市町村、民間企業による発電所を7カ所程度新設し、既存施設と合わせて、23カ所の稼動を目指している。その背景には、昨年8月に成立した再生エネルギー特別措置法や土地改良区による発電事業の規制緩和などがあり、県では小水力発電の先進県として取り組みを加速させる考えだ。

●世界初のゼンマイ式小水力発電装置

 富山県では、優れた技術を持った異業種からの参入や、小水力発電技術等の開発を支援するため、「小水力発電技術開発促進モデル事業」を進めている。「小水力発電進出支援事業」と「小水力発電技術開発支援事業」の2事業で構成されており、前者は、新たに小水力発電分野に参入する企業に対して、事業化の構想や今後の技術開発のための調査などを支援するもの。後者は産学官連携による技術開発への取り組みを公募し、優れたものを選定し、開発を委託するもので、平成23年度では県内企業3社が選ばれて開発を進めている。このうちの1社、黒部市のゼンマイメーカー、東洋ゼンマイ(株)は、富山国際大学と共同で「ゼンマイ式小水力発電装置」をこのほど開発し、今春から実証実験を始める。

 「ゼンマイ式小水力発電装置」は、長さ20m、幅3cmほどの鋼板を巻いた直径20cmほどのゼンマイ2個と長さ1mほどのらせん水車を組み合わせた点がユニークだ。水車が回転することで1個のゼンマイが巻かれ、巻き切ったゼンマイによって発電する。その間にもう1個のゼンマイが水車の回転で巻き取られていく。この動作を同時に行うことで、継続的な発電が可能になる仕組みだ。幅50cm、深さ50cmの用水路で、低落差(50cm以内)あれば、24時間蓄電することで30Wの電球を4時間ほど点灯できる。

 通学路の防犯灯や土石流・崩落危険地域の監視用装置、鳥獣害防止用鉄柵、観光用音声ガイド装置に用いる発電装置などが用途として想定されており、2年後の実用化を目指している。

 東洋ゼンマイ(株)は創業80年余で、国内でも数少ないゼンマイメーカー。玩具で使用されているゼンマイでは世界市場の約30%を占める。ゼンマイ式の音声ガイド装置(観光案内マップ、観光望遠鏡など)といったユニークな製品も手掛けている。

 東洋ゼンマイ(株)の長谷川光一社長は「構想から4年でようやくここまできました。ゼンマイ発電は安全でエコ。農業用水は水利権などの課題もありますが、水の流れる水路にポーンと装置を置き、簡単に発電を始められるようなものを目指したい。生活に身近なところでいえば、雨どいをつたう水の力で発電する装置の開発も夢の1つです」と話している。


▲ゼンマイ式小水力発電装置


問い合わせ
「農業用水を利用した小水力発電」について
●富山県農林水産部農村整備課
TEL.076-444-3377
FAX.076-444-3437
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1602/

「小水力発電技術開発促進モデル事業」について
●富山県商工労働部商工企画課 新産業科学技術班
TEL.076-444-3245
FAX.076-444-4401
http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1301/

「ゼンマイ式小水力発電装置」について
●東洋ゼンマイ(株)
TEL.0765-52-0208
FAX.0765-54-1329
http://www.zenmai.co.jp

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